CaperdonichC 〜ウッド・フィニッシュは「化粧した素顔」〜
さて,No.2,これはシェリー・ウッド・フィニッシュでした。
invigorated by 3 months maturation
in reconstructed ex sherry wood octave casks
と書いてありましたから

invigorateは,「〜を活気づける」という意味の他動詞です

オクタブですから,3ヶ月でも,ウッド・フィニッシュの影響ありますよね


2-DUNCANTAYLOR OCTAVE 1972-2010 37年 46.4%
Whisky Magazine 2010 winterに,
ウッド・フィニッシュは「化粧した素顔」という表現がしてあり,
なんだか腑に落ちた感じがしていました。
その部分を引用します。
大西正巳氏の「モルトウイスキーの多様化・個性化」という記事です。
さて,ウッド・フィニッシュ製品は
上記の製品類とは少し個性化の意味合いが異なります。
「フィニッシングでフィニッシュ(後味の感覚)を良くする」
という意味もあると思いますが,
貯蔵で得られた素顔の熟成感に
特徴的な樽の個性をプラスする「化粧した素顔」のイメージになります。
つまり,後熟樽としての本質的な熟成反応を期待すると言うよりも,
短期間に前酒の香味的な特徴を抽出する(樽内でカクテルする)という狙いを感じます。
中には,フィニッシング樽の問題や
折角得られた良質の熟成感を損なう個性化の事例も
残念ながら見受けます。

Whisky Magazine 2010 winter
化粧をすれば,いろいろに化けられるわけですから(笑),
確かに多様化・個性化にはもってこいかもしれませんが,
化粧の仕方によっては,素顔のよさを台無しにする,ってことですよね。
逆に,化粧した顔がとても素敵で,素顔はまるで別人とか(笑)

私は,化粧が好きではなく,いつも素顔で過ごしていますが,
一般論として,本当は素顔が一番綺麗なんじゃないかな,って思っています。
女性は化粧をしなければ,というのは,単なる思い込みで,
文化や社会が勝手に作り上げたものだと思っています。
モルトも然りで,
樽ごとにすでに個性があるわけだから,
その個性で私は十分満足できるタイプかも

「素顔」のモルトが好きです

と言いながら,ウッド・フィニッシュの美味しいものは,
随分たくさんいただいているのですが(笑),
それが「化粧」だとわかると,
「素顔」のあなたが見てみたい!と思う次第です。
まさにNo.2のボトルに感じたことでした

この記事,もう一箇所感動したところがあるので,
引用します。
「ゆらぎ」は「バラツキ」とは根本的に異なります。
「バラツキ」は設備の不備,価値や魅力をつくるという思いの欠如,
スキル不足によるミスが原因で生ずる無秩序な品質変動です。
一方,「ゆらぎ」は風土や自然環境のリズム(心地よい乱れやノイズ)と
職人の感覚や熟練技のリズムに由来します。
そのため,心を込めてつくるウイスキーには両者のゆらぎがうまく織り込まれ,
その中味は手づくり感と神秘性や意外性のある味わいを生みます。
勿論,飲み手もゆらぎますが,
ゆらぎは複雑なおいしさと心地よさにつながり,
バラツキは飲み手にとってもウイスキーにとっても
”おさまり”が悪いものになります。
この前の「プロとアマ」に当てはまりそうな内容です

http://blog.stand-bar.com/article/188125685.html
バラツキはアマチュアの世界の話,
ゆらぎは,個性があり味わいのあるプロの世界の話,ではないでしょうか

そしてこの記事は,次で締めくくられています。
結局は,「ウイスキーが喜ぶことは何か」を考え続けることが大切だと思います。
ウイスキーが喜べば飲み手もそれに反応して喜び,
そしてそれが作り手の喜びとなって返ってくるものだと思っています。
そうですね。
モルトが喜んでいる化粧はいいのですが,
人間のエゴでなされた化粧はモルトにとって大迷惑。
どの世界も因果応報

自分のしたことは,そのままの形で返ってきます。
ウイスキーが,そして相手が喜ぶことをまずしてあげれば,
自分が喜ぶ状況が返ってきます

ウイスキーが喜ぶこと,
「美味しかったよ


と,どのボトルにも言うこと

今回も言いたい放題でしたが,
どのモルトにも感謝しています


