1年前から紹介したいと思っていた本があります。
読破してからにしようと思っていたら、途中でストップしてしまい、
それっきりになっていましたが、
せっかくなので紹介したいと思います。
本を全部読まないと人に紹介してはいけない、
という理由はありませんから

「アノスミア」
あまり聞きなれない言葉ですが、
anosmia 嗅覚消失症、無嗅覚症のことです。
文字通り、香りを感じなくなる症状です。
この本は、著者がアノスミアになり、
それを取り戻すまでの実話です。

モルトを飲むようになってぶち当たった壁が、
香りをどう表現していいかわからない。
ま、味もそうなんですが、
テイスティング用語がピンと来ないということ。
自分で感じる分にはどう表現してもいいけれど、
これを人に伝えるときには、何か「共通語」がいるのではないかと、
それを学ぶのにこうしてモルト会に参加したり、
調香を学んだり、しているわけです。
で、この本をこのブログで紹介したいな、と思ったのは、次の一節。
ほかの感覚とちがって、においは言語を寄せつけない。
においを表現する言葉はいずれも
厳密にはほかのものを表す言葉、
ほかの感覚で知覚されるものばかりだ。
においとは比喩で表現される感覚であり、つねに、
もっと具体的でわかりやすい他の感覚との比較で語るしかない。
使われるのは味覚の用語が多い(芳醇な、みずみずしい、酸っぱい、甘い)が、
視覚(鮮やかな、濁った、緑色の)、
触覚(温かい、やわらかい、涼しげな)の用語もあれば、
音や音楽を思わせるもの(のびやかな、メロディアスな、深みのある)もある。
これを読んで、ほっとしました(笑)。
そうそう、嗅覚特有の形容詞はないんだよ(笑)!
そして、感覚というのはとても個人的なものだと。
例えば「みずみずしい」という言葉で表現される感覚も、
自分が「みずみずしい」と感じた体験を思い出しているのであり、
個人の体験が違えば、
「みずみずしい」という言葉で表現される感覚も
個人差があるんだよね、と。
だから、テイスティングは、個人的なものであっていいんだと。
一番最初にモルトを飲んだ頃、
テイスティングなんて知らなかったので、
モルトの覚えるのに、
クラガンモア→頭のてっぺん(百会)が開く
オーバン→立板に水
みたいな、誰にも共有されない覚え方をしていましたが、
その頃の感覚でいいのかな

そうそう、そして、味覚は嗅覚があって成立します。
嗅覚を失うと、味がわからなくなる。
美味しい♪とモルトを飲めるのは、
嗅覚があるおかげです

香りを表現できなくても、香りがわかる、ということは
とても素晴らしいことなのです。
嗅覚に感謝

